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保育は、「質」の時代へ

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 社会は目まぐるしく変化しています。価値観も多様化、複雑化する中で、教育をどう考えるのか見極めていく時代になりました。子どもの教育には一体何が求められているのでしょう。

 例えば最近の学生は、就職採用試験の選考で、発想力やコミュニケーション力、さらには自分の意見や思考の「質」が試されます。それは、みんなと同じことが同じようにできることや、先生の言われたことをそつなくこなせることとは異なった視点です。保育でも、その「質」が問われているのです。

「保育の質」という視点

 OECD(世界経済開発機構)では、1998年より北欧諸国をはじめ、各国が「保育の質」を改善するためにどういった取組みを行っているか、調査・公表が始まりました。以降、「保育の質」を高めるための研究が盛んに語られるようになってきています。今年になって、日本の調査報告もOECDで初めて記載され、比較検討が始まりました。これから私たちが「保育の質」ということばを目にする機会はますます増えることでしょう。
 では、お家の方が幼稚園を選ぶ際に、こうした「保育の質」の視点がどのように生かせるでしょうか。

調べる・知る

 幼稚園を選ぶ上で、まず調べやすいのは、園のホームページや入園案内資料でしょう。情報を仕入れ、各園の理念や特徴を知ることが容易にできます。しかし、これらはあくまで文字情報です。この情報を念頭に置いた上で、実際に見学して検討する材料にするとよいでしょう。もし書いてあることと実際とが違えば、質問してみるとよいでしょう。そうすれば誤解が生じなくてすみますし、お互いにとって「保育の質」を考えるきっかけになります。

見学する

 実際の保育の様子は、ホームページや入園案内だけでは分かりません。したがって、見学が必要になります。できれば、「見学会」や「体験保育」といったプログラムに参加するだけでなく、例えば普段の園児と保育者とのかかわりが見学できるとよりよいでしょう。
 子どもの遊びや発想は実にユニークです。園内で子どもたちがどのように過ごしているかをご覧になられると、お子さまの遊ぶ姿も想像しやすいかと思います。

「保育の質」をみるためのポイント

 ポイントはいくつかありますが、重視したい点を挙げてみます。

●「遊び」の場が充実しているか

●自由な「学び」の場が保障されているか

●子どもにとって身近な環境(日常生活・自然・人・物)が保育にどう生かされているか

 幼児期の子どもには、自由な遊びの時間がたっぷり必要です。子どもはもともと「遊び」が大好きです。そして「遊び」には、たくさんの「学び」があります。
 幼稚園での自由な遊びの中では、子どもどうしの関わりが自然に生まれます。そこで遊びが広がれば、想像力もふくらみ創造的な発想が育ちます。また、おもちゃの貸し借りをしたり、協力して何かを一緒につくったりする中でも、そこに子どもならではのコミュニケーションがあり、経験の積み重ねが社会性を育てていきます。
 もし、自由な遊びの時間が十分ではなく、いわゆる文字や計算といった早期教育ばかりに偏ると、大人になってから社会的な犯罪行為を起こす発生率があがるという研究結果も最近では報告されています。

 また、「遊び」には楽しさが満ち溢れていて、ワクワクしながら一つの遊びにじっくりと集中して取り組んだり、探究したりする場面も出てきます。この経験は人間が生涯にわたる「学ぶ」楽しさの基盤になります。小学校にあがって以降、勉強することの本質は、こうした探究する楽しさを幼児期にどれほど感じ、味わってきたかということと関係します。

子どもにとって身近な環境

保育者の専門性

 子どもにとって、幼稚園の中で最も身近な環境といえるのは保育者です。「保育の質」は、保育者の質、専門性が左右するとも言われています。そのくらい子どもと保育者との関わりは重要だと思います。

 例えば、子どもが自分では分からないことを保育者に質問したとします。その時、保育者が「それは○○だよ」とすぐに教えたらどうでしょう。子どもが自主的に学ぼうとしている機会を摘んでいると言えますし、自分で考えることもやめてしまうでしょう。大人にとって分かりきったことも、子どもにとっての疑問は、ともに考えたり、調べたり、試してみたりするいい教材です。すぐに分かることよりもじっくりと探求のプロセスを体験することで、子どもは「学ぶ」楽しみや「考える」楽しみを実感するのです。

 ぜひ、子どもと保育者とのやりとりにも耳を傾けてみてください。きっとそこに「保育の質」に関わる大きな要素が隠れているかもしれません。

自然・人・物・地域等のかかわり

 幼稚園生活全体の安全性は大切です。しかし、そこに子どもの遊びが創造的に広がる仕掛けがあるか、自然環境や動植物とどうふれあえるのか、どのような素材を使用しているのか、それらが子どもと対話するように配置されているか、なども「保育の質」を見るポイントになると思います。

 子どもが興味関心の湧くものは、子どもにとって身の回りの世界、それは幼稚園の中だけでなく周囲にも広がります。こうした身近な環境世界が、幼稚園でもご家庭でも大切なことに代わりはありません。

「保育の質」の視点が社会をつくる

 「保育の質」の視点は、どのご家庭の方にとっても満足のいく幼稚園選びにはならないかもしれません。しかしながら、皆さまが「保育の質」の視点を知ることによって、私たち幼稚園や保育者も今まで以上に「質」を高めようとする好循環が生まれるでしょう。そして、それがお子さまにとって、よりよい保育が受けられる社会づくりにも繋がると思います。

 ぜひお互いに対話をして、子どもが幸せに育っていける社会を築いていけたらけたらいいですね。何より、あなたの大切なお子さまは、社会の宝でもあるのですから。