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子どもの自立を育てる「反抗期」の親子のコミュニケーション
そのとき、とまどわずにいるために

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 思春期になると、子どもの心身に変化が訪れる。体が大人へと近づくのと同時に、言葉や態度で親への反抗を表すようになる。それが「反抗期」だ。それまで親に甘え、従順だったわが子の態度の変化に、親として時には寂しさを感じたり、とまどってしまうこともあるだろう。しかしそれは子どもが自立に向かい成長していく上で大事なステップだ。そのとき、子どもが順調に自立へと向かうためには、親とのコミュニケーションが重要なカギとなる。

いまどきの反抗期

 思春期には誰もが経験するはずの「反抗期」。ところが近年、子どもたちの反抗期に変化が表れている。反抗期がほとんどないまま成長していく子ども、反対に激しい反抗行動を起こし、ときには暴力を振るったり不登校となる子どもと、両極化しているという。反抗期は、それまで完全な親の保護下にあった子どもが、将来、自分の力で生きていくために「自我」に目覚め、自立心を育む重要な時期。反抗期がないまま大人になると、子どもは社会性に欠け親からの自立が難しくなってしまうことも。逆に激しい場合は、大人になっても問題行動を起こしたり、無責任で社会性に欠けた大人に成長する心配がある。反抗期はなくても激しすぎても心配なもの。今の子どもたちに、どんな変化が訪れているのだろうか?

 このような変化は、社会の変化が背景となり、親を含め、子どもをとりまく環境が影響しているようだ。将来、自立した大人へと子どもが成長していけるよう、親としてどのようにサポートしたらいいのだろう?

親の接し方で変わる子どもの反抗期

 豊かな時代を迎え、少子化により一人の子どもにかける経済的なゆとりが生まれたことで、愛や手間も手厚くなった。そのような背景から、子どもは幼いころから「不自由」を体験せずに成長していき、その結果、自発性が乏しくなってしまうのだという。また、子どもとの対立を避け、子どもの言いなりになってしまう親、反対に不干渉や無関心になってしまう親、「ほめる教育」を実践し、何でも褒めて叱らない親など、親の子どもへの接し方が、現代の子どもの反抗期の変化に大きく関わっているという。

 子どもへの接し方の中で、細かなことまで子どもに指図する「支配」、力で従わせる「服従」、放任や無関心による「拒否」、小さな赤ちゃんを守るような「保護」といった要素のどれかが極端に強すぎたり弱すぎたりすると、子どもの反抗期に影響を及ぼすという。「支配」をし過ぎると、子どもは親の言うことをよく聞くが、自分で考えたり判断する自発性が育たず反抗期が弱くなる。「服従」の場合も子どもはおとなしく従うが、反抗期には逆に暴力を振るうなど激しく反抗し、責任感がなく乱暴な性格に育ってしまう。「拒否」も同様に、子どもは親からの愛を実感できないため激しい反抗を示し、劣等感が強く社会性に欠けた子どもに育つ。そして「保護」は、情緒は安定するため反抗期は弱いが、困難に立ち向かう力が育たず、ストレスに弱い子どもになってしまう。

 子どもが順調に反抗期を迎える基礎は、幼少期から小学生時代につくられる。大切なのはさまざまな要素のバランスと、その時々に応じた臨機応変な対応だ。親として子どもの成長をサポートできる子どもへの接し方とはどんなものなのだろう?

反抗期の子どもと向き合うほどよい「距離感」

 生まれたばかりの赤ちゃんのときと、自分の考えや意見を主張するようになった思春期とでは、子どもへの接し方は変わって当然。「いい親」のあり方とは、子どもの成長段階によって変化していかなければならない。

 反抗期は子どもにとっても不安定で、子どもは心理的なストレスを抱えている。そんなとき、親として子どもの成長を見守りながらサポートしていくには、ほどよい「距離感」を保つことが秘訣だという。

 思春期の子どもは、自分を客観的に見るようになり、周囲の自分への評価が気になるようになる。このような不安定なときに、必要以上に干渉するのは避けた方がよい。子どもにも「これ以上、立ち入ってほしくない」という心の領域があることを頭に入れてそれを尊重し、少し離れた距離から子どもを見守ろう。

 しかし反対に離れすぎるのも問題だ。子どもが話したいときには付き合い、求められたときにはいつでも相手をするようにしよう。反抗期の子どもは、親に対して自分の考えや意見を主張するようになる。そのとき、頭ごなしに否定したり、何でも聞いて言うとおりにするというのではなく、間違いは正し、親としての意見をきちんと伝えよう。反抗期は親の保護下からひとりの自立した大人へと成長する過渡期であり、親との対等な関係が築かれる大切なステップだ。子どもを個人として尊重しながらも、親として子どもを正しい方向へと導いてあげよう。

性格別に見た子どもへの接し方

 一人ひとり個性があるように、子どもの性格もそれぞれ異なる。子どもへの接し方は、子どもの性格を考慮して工夫することが必要だ。反抗期には特に配慮したい。

 思いどおりにならないときなどに、子どもが見せる反応の傾向に注目してみよう。近年の子どもによく見られる「キレやすい」タイプは、親に対しては素直である反面、嫌なことがあっても我慢をして口にしないことが多い。このような子どもに対しては、普段から子どもが本心を言いやすい雰囲気を家庭の中で作り出しておくことが大切だ。反対に、普段からよくしゃべり、学校であった細かな事柄も親に話そうとする子どもに対しても、忙しくても面倒だという態度をとらずに子どもの話に耳を傾けよう。我慢強く、反抗心をあらわにしない子どもも、実は心の中に溜め込み、ストレスを抱えている子どももいる。ほどよく離れた距離感の中でも、「いつでもあなたの話を聞く」という態度を示し、子どもに安心感を与え、話をしてきたときにはしっかりと受け止めてあげよう。

反抗期は子どもが成長する
絶好の機会

 反抗期を迎えた子どもは、それまで一体だった親子の価値観から独立し、自分なりの考えを持ち行動するようになるための自我に目覚め、自立心を育てていく。そのときの親と子のコミュニケーションが、子どもの成長を促す上で大事な助けとなる。

 子どもが親に対して親と異なる意見を主張したとき、どうすればいいのだろうか? 親としてはとまどいや不安、時には怒りも抱くこともあるだろう。しかし、意見が食い違ったときこそ、親との充実したコミュニケーションをとることで、子どもにとって重要な能力が培われるのだ。

 意見が異なったとき、頭ごなしに指図をしたり、逆に子どもの言いなりになってしまうのではなく、お互いの考えを話し合い、納得するまで話し合うことが大切だ。子どもと衝突することを恐れずにしっかりと向き合い、子どもの意見を聞きながら親としての考えを伝えていこう。そのプロセスの繰り返しが親子の相互理解や信頼関係を深め、同時に子どもには高度なコミュニケーション能力が身についていく。このコミュニケーション能力こそ、社会の中で生き抜いていく上で欠かせない重要な力となる。対人関係を円滑に築くだけでなく、さまざまな場面での交渉力や調整力といった能力を発揮するにはコミュニケーション能力は欠かせない。この力を子どもが身に付けられるよう、親子の豊かなコミュニケーションを図り、実りある反抗期を過ごしてほしい。